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超低損失磁心材料技術領域
  • 概要 OUTLINE
  • 研究内容 RESEARCH CONTENTE
  • 共用設備 SHARED EQUIPMENTE

概要 OUTLINE

~新ナノ結晶軟磁性材料の開発による送電ロスの抑制、電力損失の大幅低減~

東北発 素材技術先導プロジェクトの概要

東北発 素材技術先導プロジェクト(文部科学省、復興庁)は、「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、東北の大学や製造業が強みを有するナノテクノロジー・材料分野において、産学官協働によるナノテクノロジー研究開発拠点を、東北大学を中核として形成するものです。

本拠点では世界最先端の技術を活用した先端材料を開発することにより、東北素材産業の発展を牽引し、東日本大震災からの復興に資することを目的としています。

超低損失磁心材料技術の取り組み

地球規模でのエネルギー消費量削減のため、電力輸送から日常電化製品までのあらゆる分野で電力効率を改善することが求められています。モータやトランスなど磁気応用製品の電気―磁気変換に伴う磁心損失(エネルギーロス)は、全電量消費量の3.4%と大きな割合を占めています。一方で磁心材料として96%のシェアを占めているケイ素鋼によるトランスやモータなどの電力効率の性能向上は限界に達しつつあるのが実情です。

この磁心損失低減という課題に対し、東北大学が生み出した特異な自己組織化ナノヘテロアモルファス構造の結晶化を利用し、極限まで低い磁心損失を実現しうる革新材料としての超高鉄濃度ナノ結晶軟磁性合金の創成を行います。

本プロジェクトでは、このナノ結晶軟磁性材料分野における磁気理論とナノ組織理論を統合した本質的な材料設計指針を構築し、実用化に向けた多くの技術課題に対し異分野の学術及び工学領域が協働して解決する組織的研究を行い、本学術領域の発展を牽引します。
更に、これらの革新的な基盤技術を軸として、産学官連携を多面的に進めることにより東北地域の産業活性化につなげます。

研究内容 RESEARCH CONTENT

軟磁性体の常識を破る

鉄損が低く飽和磁束密度が高い材料は、市場からは求められてきておりますが長い間実現されてきておりません。軟磁性材料開発において鉄損と飽和磁束密度(Bs)は相反する要素であり、鉄損を小さくするとBsも下がり、Bsを上げようとすれば、鉄損は大きくなります。

透磁率が高く、鉄損が低い軟磁性材料には、鉄酸化物系のフェライト、コバルト(Co)基アモルファス、ニッケルー鉄(Ni-Fe)などが知られておりますが、これらの材料は総じてBsが極めて高い純鉄と比較して数分の1程度のBsしか有しておりません。逆にBsが高いFeやケイ素鋼は、透磁率が高いCo基アモルファスなどと比較して透磁率が1桁以上低下します。

本研究における鉄基の超低損失ナノ結晶軟磁性材料は、従来の高透磁率材料並みの低鉄損を持ちながら、ケイ素鋼並みの高いBsを持つという、これまでの軟磁性材料の常識を覆す性能を備える点で画期的な材料です。

軟磁性体の常識を破る

超低損失ナノ結晶軟磁性材料「NANOMET®

本研究グループが見出した材料は鉄を質量比で93~94%を含む高鉄濃度の材料で、構造は10nm程度のα鉄(α‐Fe)の粒の周りにアモルファス磁性層を持つ高鉄濃度型の超低損失ナノ結晶軟磁性材料です。("NANOMET®")アモルファス磁性層の組成は、Siやホウ素(B)、リン(P)、銅(Cu)など一般的な元素で構成され、レアメタル系は含まないため、材料の高騰によるリスクが小さい理想的な材料です。

低鉄損で高磁束密度を達成する「NANOMET®」は、強磁場を必要とする用途での活躍が期待され、特に大きな貢献が見込まれるのは、送電網に用いる大電流トランスや、モータでの利用です。トランスやモータに今回のナノ結晶材料を適用すれば、鉄損を減らすことによる省エネ化が可能なためです。

トランスやモータのコイルの内側に置くコア材には、1.5T程度の磁束密度を通すことが求められ、このような用途では一般に、ケイ素鋼が使われます。このケイ素鋼と「NANOMET®」で、50Hzの周期で1.5T磁束密度を通したときの鉄損を比較すると、「NANOMET®」の方が、1桁減あるいは数分の1という小さい値を実現できる、他に類をみない高性能なナノ結晶軟磁性材料です。

超低損失ナノ結晶軟磁性材料「NANOMET TM」

新ナノ結晶軟磁性材料の開発による送電ロスの抑制,電力損失の大幅低減

超低損失磁心材料技術領域

プロジェクトの終了を迎えて

「東日本大震災からの復興基本方針」に基づき、復興に資することを目的として2012年6月から東北発 素材技術先導プロジェクトが開始され、来る2017年3月末日でプロジェクト期間5年の満了を迎えます。超低損失磁心材料技術領域においては、モータやトランスなど磁気応用製品の電気―磁気変換に伴う磁心損失(エネルギーロス)低減という課題に対し、超高鉄濃度ナノ結晶軟磁性合金であるNANOMET®の研究開発により取り組み、薄帯の幅広化を経て、世界最高水準の高効率モータの省エネ性、更に、実用サイズの圧縮機駆動による省エネ性等、様々な実証を積み重ねてまいりました。また、NANOMET®の開発・製造販売を担う大学発ベンチャー(株)東北マグネット インスティテュートの設立に漕ぎ着け、事業活動を開始しております。ここに至ることができましたのは、皆様方のご支援、並びにご尽力の御蔭であり、心より感謝申し上げます。

プロジェクト終了は一つの区切りとなりますが、本プロジェクトの真価は、国プロという後ろ盾を失った後に問われるものと存じます。当技術領域の成果を発展させ、地域復興の息吹を力強いものとする為、事業を継承する (株)東北マグネット インスティテュート(TMI)と共に、NANOMET®の発展に継続して努めてまいります。

文科省及び地域連絡協議会をはじめとする、産学官連携に携わられた皆々様に改めてお礼を述べさせていただくと共に、ますますのご発展をお祈り申し上げます。