ご挨拶

 東北大学には、トライボロジー研究を推進するための幅広い分野の研究者が協働できる高いポテンシャルがあります。これまでも機械工学的研究に加えナノレベルの計測技術や量子化学計算を基盤とする摩擦研究が密接に連携しながら展開されており、従来の機械工学的な技術開発の枠にはまらない異分野融合研究が進行しています。さらに学術分野にとどまらず民間企業との共同研究も活発になされております。このような機械分野と材料・ナノテクの融合はトライボロジーの研究において真に求められるアプローチとして期待されており、国内外から注目されております。

 一方、摩擦の制御は自動車をはじめ、あらゆる産業分野、生活環境の効率的なエネルギーの利用と安心・安全の鍵を握っています。例えば、自動車のエネルギー損失の約20%は摩擦に起因しており、摩擦の低減技術が燃費の向上に直結しています。これまでの優れた摩擦低減技術は、数多くの現象の発見、工業上の体系的知識や経験的智恵にもとづき開発され、例えば、自動車においては0.75 %/年(過去20年の平均)の燃費向上を達成してきました。しかし現代においても摩擦現象は科学的に未知の部分が非常に多く、これまでの開発手法に加え科学的解明に裏付けられた技術開発が強く求められています。

 本領域においては知と技術革新(イノベーション)の拠点機能を形成し、機械と材料の研究者、そして産業界の技術者がともに協働し、先端的・科学的な計測や計算科学技術を駆使した研究開発を行い科学的な視点からナノレベルで現象を解明するとともに、それに基づく超低摩擦技術を開発します。

 低摩擦技術における革新的技術シーズの創出と実用化への橋渡しをもとに、産業集積や雇用創出による東北復興や新産業形成、さらに科学技術振興による東北素材産業の発展を牽引することをめざします。

背景

トライボロジー現象(様々な工業製品の中で起こる摩擦と摩耗)は身近な生活の中に見いだされます。

 本技術領域では下図のとおり、機械・材料科学分野における材料創成、低摩擦発現技術と界面評価・解析を基盤とすることにより、超潤滑ナノ界面の最適化技術を開発します。具体的には、ピストンや軸受などエンジンにおける機械部品の摩擦損失を低減する「油潤滑」、新エネルギーシステムのための「水潤滑」、次世代真空機器等における適用が望まれている「固体潤滑」について、固-液界面特性、潤滑剤・添加剤の作用メカニズム、ナノ界面形成メカニズム(なじみ過程)をそれぞれ明らかにすることにより、燃費効率の大幅な向上等に資する実用低摩擦材料・界面設計技術を構築していきます。

 摩擦は固体表面・潤滑油、摩擦条件など多くの要素が界面において複雑に絡む動的特性のために、これまではシステムとしての特性評価による多様な経験的知恵に基づく開発が中心的に行われており、基礎的かつ理論的な検討が十分に行われているとは言いがたいのが現状です。

 本研究は東北大学におけるトライボロジー研究を推進するための幅広い分野の研究者が協働できる高いポテンシャルを活かして、低摩擦発現技術、物質の界面評価・解析技術、計算科学技術を融合することにより、摩擦界面を科学的に理解し、その理論に基づいて研究開発を進めるものです。実用化を強く念頭においた技術開発及び学術的機構解明に裏付けされた技術開発をテーマ設定の理念としています。

超低摩擦技術領域 紹介映像

超低摩擦技術領域 紹介映像

超低摩擦技術領域にについて機器設備などの紹介をふまえながらまとめたショートムービーです。